ART Driven Tokyo編集部

Photo: ART Driven Tokyo

もし、ギャラリーで一枚の絵を買ったなら、それが10万円であろうが、1000万円であろうが、あなたは「アートコレクター」だ。アートフェアのVIPとして招待されるかもしれない。

そして、人生が変わる、ということもあるのだ。筆者もそうだった。運命の作品に出会うとき、コレクターの人生も変わる。現代アートの世界の演者は、作家とギャラリーだけではない。コレクターも重要なキャストの一人なのだ。

筆者は今回、自分が初めて絵を買おうと思った時の気分に立ち返って、アートフェア東京2024を巡った。

画像提供:アートフェア東京

まずは、ざっと一周!相性合うギャラリーを探そう

会場である東京・有楽町の東京国際フォーラムに着くと、すでにコレクターの長蛇の列ができていた。今年は、世界36 都市から 156 軒のギャラリーが参加し、のべ5.5万人が来場したという。

活気ある人込みを縫って、お気に入りの作品を見つけるために、まずは、ざっと一周して、気になるギャラリーをピックアップしようと思う。

おお、今年は、国内のコレクターが多いようだ。40歳~50歳代の男性の姿が目立つ。その様子からみて、経済的に余裕のある、渋谷や原宿のストリート文化を経験した紳士たちのように見える。

テレビでよく見かける、国際的な有識者の男性もいる。会場のレイアウトとギャラリー名が書かれた「フロアプラン」を見ながら、熱心に各ブースに見入っている。

投資のために買う?好きだから買う?応援したいから?

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画像提供:アートフェア東京

今年は、漫画家・鳥山明さんの訃報の衝撃の影響か、漫画やアニメをテーマにしたブースに人気があるようだ。手塚治虫先生以来のレジェンド、鳥山さんの功績をしみじみとかみしめつつ、回っていく。

おお、そうだ、岡本太郎さんの父親も、漫画家だったっけ。

筆者は、約10年前、自分が初めて小さな絵を購入したときのことを思い返した。無名の若い画家の、カメリアの絵だった。お恥ずかしい話だが、筆者の予算は少なく、1万円ほどであった。

この画家とは、いまでも交流が続いている。それだけでなく、彼を通して、ギャラリストやキュレーター、アーティストたちとの人脈ができて、わたしは、自然な流れで、美術ライターとして取材を始め、記事を書いていくこととなった。

幼いころから音楽家になりたくて、しかしお金がなく音大に行くことができなかった。それでも、人生の危機や、どん底のように辛いとき、いつも芸術が私を助けてくれた。アートへの憧れが止むことはなく、そして、ついに、ライターとしてアートに関わることになった。

筆者の生涯の夢は叶い、筆者の人生は、1枚の絵で変わったのである。

よく、読者の皆さんに、「値上がりするなら絵を買いたいけれど」と相談を受ける。もちろん、買った絵が高騰していくなら、それがベストだ。ただ、最初は、「この作品が好きだから買う」「がんばっている才能あるアーティストを応援したいから買う」をおすすめしたい。

好きな作品なら、たとえ値段が上がっても、手放したくなくなるほど、あなたの人生を彩ってくれる。また、好きな作家の個展に購入後も通ううち、その作家がだんだん売れっ子になっていく様子を見るのは、何にも増しての快感だ。

作家やギャラリストと交流するうちに、美術史に関する専門的な話も出るだろう。その知的な会話は、あなたの人生の質を変えるであろう。

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漫画の哲学、ファンタジー。東京ならではの「見せ方」がある

会場には、「月刊アートコレクターズ」のフリーペーパー版が置いてあった。「アートフェア東京2024特別ガイド」だ。注目のブースの紹介を読んでみる。渋谷とソウルに拠点を置くSH GALLERYは、2022年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)とコラボレーションし、1980年~1990年代の漫画やサブカルチャーをバックボーンとした作品の展覧会を開いた、などと書かれている。

ペロタン東京は、デニムをコラージュした彫刻的な壁面作品で知られる、アメリカのNICK DOYLEを持ってきていた。アメリカ文化、消費文化をテーマにする作家は、デニムで何を訴えるのだろう。ゴールドラッシュの時代、作業着として作られたデニムは、アメリカ文化の底流であり、アメリカが現在抱える諸問題をも象徴しているように思った。

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ラウンジで一休み。2周目の作戦を練る

漫画も良いし、ペロタン、カイカイキキ、小山登美夫ギャラリー、ミヅマアートギャラリーといった超有名ギャラリーの展示もさすがだ。

ちょっと疲れた。VIPラウンジで、休むことにする。

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ワクワクしているからだろうか。いつもよりシャンパンが美味しい気がする。

同じく漫画をテーマにするにしても、同じく女性像を描くにしても、作家によって、料理の仕方が違う。味が違う。

これが、アートフェア東京の「見せ方」なのだ。

もし、あの絵を家に持って帰ったらどんな感じだろうか。いやいや、部屋に飾るとしたら、あっちの作品もなかなかだぞ。決めるのは、まだ早い。もう一周してからだ。

なにか見落としているかもしれないし。運命の作品が、ほかのギャラリーで待っているかもしれない。

画像提供:アートフェア東京

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さあ、2周目に出かけよう。人生をともに歩んでくれる、親友のような作品に出会えるだろうか。

「アートフェア東京」 開催概要

名称  アートフェア東京

企画内容  コマーシャルギャラリーによる美術品の展示及び販売

開催日程  2024 年 3 月 8 日(金)– 10 日(日) ※3 月 7 日(木)は招待制
プライベートビュー 3 月 7 日(木) 11:00 – 19:00
パブリックビュー 3 月 8 日(金) 11:00 – 19:00
3 月 9 日(土) 11:00 – 19:00
3 月 10 日(日) 11:00 – 17:00

会場  東京国際フォーラム ホール E/ロビーギャラリー(東京都千代田区丸の内 3-5-1)

入場料  前売券:4,000 円 (税込)
予約当日券:5,000 円(税込)
※小学生以下は、大人同伴に限り入場無料

主催  アートフェア東京製作委員会(エートーキョー株式会社)

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