Written by ART Driven Tokyo

現在、三菱一号館美術館(東京・丸の内)で「異端の奇才 ビアズリー展」が開かれていて、大きな話題となっています(2025.2.15- 2025.5.11)。世紀末のロンドンの異才、オーブリー・ビアズリー(1872-1898)。展覧会は、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』の挿絵を中心としています。

で、みなさん、サロメってどんな物語かご存じですか? そして、歴史的に、古くから、多くの巨匠がサロメを描いてきたことをご存じでしょうか? ここでは、5人の巨匠とビアズリーのサロメを比較して解説します!

そもそもサロメって?

サロメは、新約聖書の『マタイによる福音書』と『マルコによる福音書』に登場する女性です。物語の核心は、彼女が継父ヘロデ王の前で妖艶な踊りを披露し、その褒美として預言者ヨハネ(洗礼者ヨハネ)の首を求める、というもの。聖書ではあまり詳しく描かれませんが、その短いエピソードが長い時を超えて、さまざまな芸術家たちのインスピレーションを刺激し続けてきました。

歴史に名を刻んだ「サロメ」たち

この魅惑的で恐ろしい女性像は、多くの画家たちに描かれてきました。それぞれの「サロメ」を見比べると、画家ごとの解釈や美意識の違いが浮かび上がります。

ルーカス・クラナッハ(父):ルネサンス期のサロメ

Salome with the Head of John the Baptist
Photo: wikimedia commons

16世紀の巨匠クラナッハ(父)が描いたサロメは、まだ時代的に保守的。装飾的な衣装をまといながらも、妖しさよりは威厳が感じられます。ここでは、「妖艶な踊り子」ではなく、「冷静な貴婦人」のような雰囲気が強いのが特徴です。

ギュスターヴ・モロー:幻想と狂気のサロメ

Salome Dancing before Herod (1876). Oil on canvas, 143.5 x 104.3 cm. Hammer Museum, Los Angeles
Photo: wikimedia commons

フランス象徴主義の代表格、ギュスターヴ・モローのサロメは、暗闇の中にビビッドな色彩で浮かび上がる幻想的な姿。「崇高な美」と「戦慄」が共存する独特の世界観が感じられます。実はモローは、人体がバラバラになった状態の絵をよく描く画家。彼は「断片化」に美を見出していたのかもしれません。

カラヴァッジオ:劇的な光と影のサロメ

Salome with the Head of St John the Baptist
Photo: wikimedia commons

バロックの鬼才カラヴァッジオもサロメを描いています。彼の作品は、とにかく「光と影」がドラマティック。暗闇の中で際立つ肌の白さ、手に持たれた生首の重み、生々しい感情の表現——見ているこちらまで手に汗を握るような緊張感が走ります。

クリムト:装飾美とエロスのサロメ

Judith II (Salome), or Judith and the Head of Holofernes (1909). Oil on canvas, 178 × 46 cm (70 × 18.1 in). Ca’ Pesaro, Venice, Italy
Photo: wikimedia commons

アール・ヌーヴォーの天才グスタフ・クリムトもサロメを題材にしました。金色の装飾が輝く画面に、官能的で危険な魅力を持つ女性像。クリムトの作品の特徴でもある「エロティシズム」が、ここでも強く発揮されています。「魔性の女」っぽさが全開ですね!

そしてミュシャ! 華やかなるサロメ

Salomé
Photo: wikimedia commons

同じアール・ヌーヴォーの代表的な画家、アルフォンス・ミュシャもサロメを描いています。ミュシャは女性の美しさを華やかな装飾とともに表現するのが得意。彼のサロメは、まるで神話の女神のような完璧な美しさを誇ります。これは、本当にきれいなサロメですね!

ビアズリーのサロメ:線と構図で作るグロテスクな世界

The Climax, from the illustrations for Salomé, c. 1893–1894
Photo: wikimedia commons

さて、今回の展覧会の主役、オーブリー・ビアズリーはどうでしょうか? 彼の作品は、ミュシャとよく比較されます。ミュシャが華やかな装飾と女性美を追求したのに対し、ビアズリーは「線」と「構図」で勝負。グロテスクな世界観と、皮肉や風刺の効いた独特の作風が光ります。ミュシャが「美の極致」を追求したのなら、ビアズリーは「美と醜の狭間」で遊んでいるかのようです。

さて、あなたはどのサロメが好き?

サロメという一つのテーマを通して、これほど多様な解釈が生まれているのは驚きですね。美しく神秘的なもの、狂気に満ちたもの、官能的なもの……画家たちは、それぞれの感性でサロメを描いてきました。あなたはどのサロメに心を惹かれますか?

ぜひ、展覧会でビアズリーのサロメをじっくり見て、他のサロメたちと比べてみてください。きっと、新たなアートの魅力が見えてくるはずです!

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