Written by ART Driven Tokyo

Li Hei Di, Gapes at the vanity of toil,2025
fadeproof waterproof ink on archival paper 9″ × 12″ (22.9 cm × 30.5cm)

paper signed, titled, and dated recto in pencil
No. 94859

© Li Hei Di, courtesy Pace Gallery


2025年5月29日より、香港のペース・ギャラリーにて、リ・ヘイディ(Li Hei Diの個展「Tongues of Flare(トングス・オブ・フレア)」が開催されます。11点の新作絵画と木彫作品が展示され、観る者を夢幻の世界へと誘います。

リ・ヘイディは1997年、中国・瀋陽生まれ。現在はロンドンを拠点に活動しています。彼女の作品は、抽象と具象が交錯する鮮やかな画面に、幽霊のように半透明の身体や断片が浮かび上がり、消えていく──そんな幻想的なイメージで知られています。自己発見や変容をテーマにした作品群が並びます。

リの作品にはしばしば“妖怪”のような不定形の存在が登場します。鑑賞者はそれらを通して、欲望や自己の奥底に潜む感情と向き合うことになります。ときに愛や混乱、官能が入り混じり、観る者の感情を大きく揺さぶります。

注目すべきは、彼女が文学から受けた影響です。ジョルジュ・バタイユの『エロティシズム』、韓国の作家ハン・ガンの『菜食主義者』、トリー・ピーターズの『デトランジション・ベイビー』などをインスピレーション源とし、「欲望」「変身」「怪物性」についての深い洞察を作品に取り入れています。たとえば、『菜食主義者』に登場する「植物になりたい女性」は、自己からの脱皮と新たな存在への願望を象徴しており、リの描く“揺らぐ身体”のイメージと通底しています。

また、展示される木彫作品は、揺りかごのような舟に横たわる抽象的な身体を描いたもの。夜の眠りの中、無意識の深層へと沈んでいく身体と精神の姿を表現しています。

「Tongues of Flare」は、現実と幻想、内面と外界、生と死の境界をゆるやかに溶かし、私たちの“変わりゆく存在”について問いかける展覧会です。

展覧会情報

Li Hei Di: Tongues of Flare
2025年5月29 日– 8月 29日
12/F, H Queen’s
80 Queen’s Road Central
Hong Kong