ART Driven Tokyo編集部
アジアを愛するTomuraLee ホーチミンのアートファンと、友情と成長を祝い合う
韓国人と日本人のカップルが経営するTomuraLee Galleryが、2023年10月にベトナムのホーチミン市に支店をオープンした。10月6日に開催されたオープニング・ショー「Communication With…」では、ベトナムの現代アート界を長年リードしてきた4人のアーティストの作品が展示された。ベトナムはかつての中国と同様、急速な成長を遂げており、国民はスマートフォンを使いこなし、情報に精通している。アジアを愛するTomuraLeeのオープニングを聞きつけ、ホーチミンの100人近いアートファンが彼らと友情を交わし、互いの成長を祝った。展覧会は10月29日まで。(会期終了)
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自然の美学にインスパイアされたミニマル絵画。静かな、静かな…
Le Thiet Cuong, Alms 2023-レ・ティエット・クオンは、ベトナムでとても高名な、人気のあるアーティストだ。シンプルな色彩の選択と配置は、明快で美しい。
レ・ティエット・クオンは、キャンバスにパウダーペイントを施し、コットンの水彩紙「ドゥーアートペーパー」で覆った作品6点と、油彩画02点を携えてギャラリーの展覧会に参加した。自身のアートのコンセプトについてこうコメントした。「ミニマリズムの美学は、多くの枝分かれした道である。最初の展覧会(1991年)から今に至るまで、私はミニマリズムを他の枝で見つけてきました。1995年から2000年までは、ジャンル(静物、肖像、風景)にミニマリズムを見出した。次に、3つの展覧会『Rice Grains』(2005年)、『Drafts』(2006年)、『Trees』(2007年)、モノクロームのミニマリズム(『Lan’s Story』、2008年)……」。
レ・ティエット・クオンは、また、「私のミニマルペインティングのコンセプトは、自然の美学にインスパイアされたものです。謎が少なく、大きな空白が多く、静かで、”言葉がない”、何も描かないかのように描く、あるいはそれは、描くことなく描くこと、所有することなく描くこと、得ることなく描くことと理解できる。何かを言うなら、静かに言うべきだ。見る人が感じ、考えるための静かな空間を与えるために」とコメントした。
昔は、戦争をテーマにしたアートがたくさん。今は違う。活気ある市場はビジネスチャンス
ホーチミンの閑静なオフィス街の中心に位置するTomuraLee。オープン当日、Art Driven Tokyoは共同経営者のイ・スンウォンにオンラインでインタビューを行った。彼女は「ここはかつての中国のように成長しています。社会主義国家ですが、比較的自由です。すべての人がスマートフォンにアクセスし、ソーシャルメディアに精通し、情報を素早く伝達する。みんな忙しく、目的を持っている。私はこの活気に満ちた国が大好きです。ベトナムの現代アートを、韓国、日本、そして世界に紹介していきたいと思っています」。
イ・スンウォンはまた、「ベトナムの現代アートは、伝統的な色彩がすばらしく、質が高く、購入するのは、国内の富裕層で、今のところ市場はドメスティックです。だから、これはチャンスだと思った。今回の4人の作家は、ベトナム美術界のリーダーです。私はある展覧会で初めてレ・ティエット・クオン先生の絵を見て魅了され、購入し、ベトナム美術に興味を持つようになりました」と話す。
1975年まで20年間続いたベトナム戦争の影響で、かつては戦争をテーマにしたアートが多かった。また、自分の意志ではなくフランスに移住した人々の苦しみを表現したアートも多かった。
しかし、今は違う。多くの欧米の有名企業がホーチミン市に支店を構え、今後は若いアーティストの作品も積極的に紹介する予定だ。3階建ての瀟洒なギャラリーで、アジアの美と癒しを追求し続けるTomuraLeeがセレクトした作品群に出会えることだろう。
アクティブな韓国女性。成長するベトナムが似合う!
イ・スンウォンは、もともと韓国でアンティーク・ディーラーとしてキャリアをスタートさせた。古いものだけでは飽き足らず、日本のオークションハウスで経験を積み、2009年に自身のギャラリーをオープンした。上海や北京での経験もある。日本人画廊オーナーの戸村力也氏と結婚し、子育てやコロナなど画廊維持の困難な時期を乗り越え、気さくで謙虚な人柄でアジア各地で活躍している。
快活なイ・スンウォンとベトナム人は相性がいいようだ。「ベトナム人がバイクで移動するのは、車より速いからなんです」と彼女は微笑む。
Tao Linh, untitled 2023- タオ・リンは、独学で画家となった。彼は、自身のコンセプトをこう語る。「 「私にとって、それぞれの絵は描かれた時の感情の状態であり、見る人にとっては感情でしかありません。私は説明的な言葉よりも、表現的で比喩的な言葉を好んで使います。イメージよりも心理的なアクセントを使うことを好みます。私の絵は見る人に感情だけを喚起させ、作品と向き合った時に新たな創造性を生み出せるようにしたいのです」
Hoang Phuong Lien, Sapa love Market 2023- 筆を使わず、色紙を破ってコラージュしている。
ホアン・フォン・リエンは工業美術大学でグラフィック・デザインを学んだ。シルクスクリーン印刷、木版画、油絵など、さまざまな版画を制作してきた。しかし、彼女が本当の天職を見つけたのは、ペーパ・コラージュに出会った日だったようだ。
コラージュは形を追うだけでなく、意図的に、あるいは無意識にそれを捨てることでもある。コラージュはカッティングよりも自由で、自発的で、偶然的なものだ。
自分に合った素材を見つけること、調和を見つけること、自分を理解してくれる人を見つけることは、簡単なようでとてつもなく難しいものだ。相性のいい人を見つけるということは、自分自身を見つけるということでもある。ホアン・フオン・リエンは新鮮な花や熟した果物の静物、四季折々の田園風景、山の市場などを題材に選び、使用する紙を選んでいる。
花と向き合うと、花はもうただの花ではなくなる
Pham Tran Quan, Spring Symphony 2021- なんときれいなピンク色だろう! ファム・チャン・クアンは、季節をモチーフにするアーティストである。北部のハノイ出身で、そこには季節がある。
ファム・チャン・クアンは、大輪の花をテーマに、抽象的な、アクリル素材を使った作品4点を出品。彼のコンセプトはこうだ。「花はどんな季節にも訪れ、花と一緒に行き、花を見せ、花と向き合う。花を着る。毎日キャンバスと向き合う。キャンバスを着る。花はもうただの花ではないし、キャンバスはもうただのキャンバスではない。花は壁、キャンバスは壁。花を身につけ、キャンバスも翡翠を身につける。私を見つけ、私に回帰するということ」
経済だけでなく、現代アートの分野でも急成長を遂げているベトナム。このショーは、その魅力を、信頼と友情、他者への理解、勇気によって、最大限に引き出している。
展示会概要
場所: TomuraLee, 24 Street No.1, Luong Dinh Cua, Binh Khanh Ward, District 2 , Ho Chi Minh City, Vietnam
タイトル: Communication With…
期間: 10月 6日- 10月 29日, 2023年
営業時間: 10:00 – 19:00 火曜から日曜まで、月曜休み
入場無料
ウェブサイト: https://tomuralee.vn/
問合せ: Tel +84 9 69 121 006
Email: tomuraleevn@gmail.com