Written by ART Driven Tokyo

Installation view from Reflections of Japan
Courtesy of the artist and TomuraLee

世界を旅する英国のアーティスト、エマ・トンプソン=チャップリンの個展「Reflections of Japan」が、2023年12月8日から12月23日まで、東京・銀座のTomuraLeeで開かれた(会期終了)。日本に仕事で滞在していたとき、建物の壁やタイルに、ミニマリズム的な美と面白さを発見した。主にアクリル絵の具で描かれた絵画からは、ミニマリズムとデジタル技術が好きだという作家の、発見の悦楽が伝わってきて、元気になった。

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窓の中には宇宙人?想像する楽しみ

Installation view from Reflections of Japan
Courtesy of the artist and TomuraLee

オブジェクトは、部分を切り取ると抽象的になる。作家は、現実世界にあるものを抽象化し、再構成した。

日本人の筆者からすると、日本の建築は、ヨーロッパの古い町並みのような統一感がなく、それぞれが思い思いに勝手に出没しているような印象で、猥雑で無機質だと思っていた。しかし、そのヨーロッパから来た作家から見ると、日本建築の無機質の代表のような存在である壁やタイルが、こんなに温かく、カラフルに見えるのだ。

色彩感覚には、かなりの個人差があることを実感した。性別や年齢、国籍によって、見える色の数が違うし、同じ色を見ても、個人差がある。

プロジェクトマッピングのインスタレーションもあった。アーティストのインスタグラムのリール動画では、作品に、リズミカルでエネルギッシュな音楽が添えられていて、まるで、宇宙人が中で楽しいパーティーをしているかのようだ。

窓を見ると、中に人がいる様子を想像することができる。直接、人物が描かれていなくても、観客は、さまざまな想像をする。

色だけでなく、つやでも質感を出している。つやがあるところとないところを作ることによって、立体感が出ている。

窓から見た景色も、また壁だ。日本は国土が狭く、壁で満ち溢れているのだろうか。

窓から見た外の景色なのか、はたまた、窓に景色が反射しているのか。

何が表現されているのか、考えれば考えるほど諸説が浮かぶ。作家はよほど、日本の景色が、日本の建築物の外観が気になるのだろう。

Installation view from Reflections of Japan
Courtesy of the artist and TomuraLee
Installation view from Reflections of Japan
Courtesy of the artist and TomuraLee
Installation view from Reflections of Japan
Courtesy of the artist and TomuraLee

絵画は窓のようなもの。日本の風景を抽象化、劇的な表現に

昔から言われていることだが、絵画は窓に例えられる。額(フレーム)が窓枠で、絵が風景。

フレームとは、画面内の空間と外部の現実空間を隔てる境界だ。初期ルネサンスの建築家レオン・バッティスタ・アルベルティの「絵画論」(1435)では、画家は絵画を「開いた窓」に見立てており、遠近法を用いて描かれた絵画は、額縁がもつ「窓」の性質によって再現性が担保されていた。

そういう意味では、作家は、窓から見える日本の風景が絵にみえるのだろうか。だから、おもしろいと思ったのだろうか。

Installation view from Reflections of Japan
Courtesy of the artist and TomuraLee

部分を取り出して描いているが、そのままの描写、ではない。色面分割(ポスタリゼーション)的な手法を使っているのか。連続的な階調をもつ壁やタイルを、明暗や色彩に応じ、段階的にいくつかの階調に分けて表現している。

色数を減らし階調を調整することで、イラストのような、ドラマチックな表現となった。

Installation view from Reflections of Japan
Courtesy of the artist and TomuraLee
Installation view from Reflections of Japan
Courtesy of the artist and TomuraLee
Installation view from Reflections of Japan
Courtesy of the artist and TomuraLee

上の作品は、窓に反射した風景を描いているのだろうか。電柱の影らしきものが、家の壁に映り込んでいる。オブジェクトを幾何学的な抽象に変換し、単純化。全体的に幾何学的な美で統一され、ミニマリズムの新しい形が、広がっている。

Installation view from Reflections of Japan
Courtesy of the artist and TomuraLee

帰り道、銀座の街並みを見上げたり、見下ろしたりして、しばらく過ごした。気づけば、歩道もタイルだし、日本は、どこもかしこもタイルだらけだ。そして、このタイルや壁の向こうには、人々の生活が息づいている。

作家の想像力に感化され、作家が「禅の哲学が生きている」という日本のデザインを改めて見直し、発見する機会となった。

エマ・トンプソン=チャップリン

1975年イギリス生まれ。

ミニマリズムと建築を愛する。美術教師として世界を巡り、住んだ土地からインスパイアされた作品を制作している。ARを愛し、デジタルアートを制作する。 

以下、作家からのメッセージ。

オーストラリア、フィリピン、そして日本を含む素晴らしい場所で仕事をするという幸運に恵まれてきました。その過程でデジタル アートへの情熱を育み、エディンバラ大学でデジタル メディア デザインの修士号と美術の修士号を取得しました。

それ以来、私はその過程で多くの影響力のある創造的な人々に会いながら、いくつかの真にインスピレーションを与えるプロジェクトに取り組みました。私は自分のアートワークに命を吹き込むのが大好きで、伝統的なものとデジタルを組み合わせてアニメーションで絵を動かします。

日本の都市のモダンな風景と、禅の哲学に根ざしたそのデザイン美学、そしてそれが日常生活の精神的および儀式的価値観とどのように相互に結びついているかに魅了されました。

アーティストウェブサイトhttps://www.emmathompsonchaplin.com/

Instagram: @emmathompsonchaplin

Installation view from Reflections of Japan
Courtesy of the artist and TomuraLee

展覧会概要

タイトル:Emma Thompson Solo Exhibition「Reflections of Japan」

会期:2023. 12. 8 [Fri.] – 12. 23 [Sat.] 会期終了

場所:TomuraLee, 〒104-0061 東京都中央区銀座3-9-4 第一文成ビル603
※銀座駅より徒歩5分
※東銀座駅より徒歩3分

お問い合わせ:Tel +81 3 6264 2536
info@tomuralee.com

オープン:10:30-18:30(Saturdays until 18:00)

休廊:日、月、祝日