Written by ART Driven Tokyo

The Climax, from the illustrations for Salomé, c. 1893–1894
Photo: wikimedia commons

東京の三菱一号館美術館(東京・丸の内)で開催中の「異端の奇才 ビアズリー展」が大きな話題になっています(2025.2.15- 2025.5.11)。オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」の挿絵で世紀末の寵児となった、オーブリー・ビアズリー(1872-1898)。彼の絵は、線と余白だけで見る者を幻想の世界へ引き込み、時代を超えて衝撃を与え続けています。

この記事を読んで展覧会に行けば、「ビアズリーのここがすごい!」と語れて、尊敬されてしまうかも。初心者でもわかりやすいポイントを紹介します!

① とにかく最高におしゃれ!雰囲気がいい!

John the Baptist and Salome, c 1893–1894
Photo: wikimedia commons

ビアズリーの絵をひと目見れば、その独特の美しさに引き込まれます。彼の描く人物は、異様に引き伸ばされた手足、うねる髪の毛、奇妙に誇張された衣装、感情の読めない顔……どこか冷たくて優雅な悪夢のよう。

彼のスタイルは、アール・ヌーヴォーの流れをくみつつも、独自の「毒」を含んだもの。一般的なアール・ヌーヴォーが温かみのある曲線を特徴とするのに対し、ビアズリーはその曲線を鋭く、冷たく、不気味に仕上げています。まさに唯一無二の世界観!

② 構図が絶妙! 余白のアート

ビアズリーの作品をよく見ると、余白(ネガティブスペース)の使い方がとても巧みです。多くの画家が空白を埋めようとするのに対し、ビアズリーはあえて「間」を作り出し、緊張感を演出しています。

また、黒一色のベタ塗りと緻密な装飾のバランスも絶妙。白黒だけで妖艶さ、退廃、官能、恐怖を表現するこの手法は、ほかの挿絵画家とは一線を画すものです。どこを切り取ってもポスターや版画として成立するような、グラフィカルな美しさが魅力!

③ 精密だけど過剰じゃない! バランス感覚すごい

ビアズリーの作品は、人物の衣装や背景の装飾が細かく描かれています。でも、不思議と「やりすぎ感」がないんです。

その理由は、繊細な線と大胆な黒ベタの絶妙なバランス感覚にあります。緻密なディテールを詰め込んでいるのに、決してゴチャゴチャせず、むしろスッキリと洗練されている。このセンスが、ビアズリーを唯一無二の存在にしているんですね。

④ 絵を見ただけで物語が分かる!

ビアズリーの作品は、一枚の絵だけでストーリーを語る力を持っています。これは、プロの画家といえども、できる人は多くはありません。たとえば『サロメ』の挿絵。官能的でありながら、どこか死の香りが漂う独特の雰囲気がありますよね。

見ただけで「これはただの美ではない……」と感じさせるほどの強烈なインパクトがあります。この「生と死の曖昧さ」を、白黒のコントラストだけで表現するのがビアズリーの真骨頂。

Le Morte d’Arthur, book IV, chapter XVI
Photo: wikimedia commons

上の写真は『アーサー王の死』シリーズのひとつです。中世の騎士たちの力強さと女性の妖艶さを、独自の幻想的なタッチで描いています。どの作品も、眺めているだけでまるで物語を読んだような気分に!

まとめ

ビアズリーの魅力を一言で表すなら、「おしゃれ!」

・異様なまでにスタイリッシュな人物描写
・余白を活かした緊張感のある構図
・緻密なのに洗練されたデザイン
・一枚で物語を語る圧倒的な表現力

展覧会に行くなら、ぜひこれらのポイントを意識してみてください。展覧会をますます楽しめるはずです!

「そもそもビアズリーって誰?」。異才の生涯をわかりやすく解説していますので、ぜひ読んでみてください!

ビアズリーの代表作サロメは、古くから多くの巨匠が描いてきました。それぞれのサロメを解説し、ビアズリーのサロメと比較しています。こちらも、ぜひご一読を!