Written by ART Driven Tokyo

PATHLESS 2
Courtesy of the artist and Diesel Art Gallery

世界が注目するアーティスト兼俳優ジョセフ・リーによる日本初個展「PLEASURE IN THE PATHLESS WOODS」が、東京・渋谷のディーゼル・アート・ギャラリーで、2023年9月23日(土)〜11月16日(木)まで開催された。

ジョセフ・リーは、ロサンゼルスを拠点に活躍する韓国系アメリカ人のアーティスト兼俳優。

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特異な肖像画で知られる。コロナ禍で自然を主題に。バイロンの詩によせて

Photo: Miki Matsushima
Courtesy of the artist and Diesel Art Gallery

展覧会タイトルの「PLEASURE IN THE PATHLESS WOODS(道なき森の喜び)」は、ジョージ・ゴードン・バイロン(1788–1824)の詩「チャイルド・ハロルドの巡礼」の第IV歌の一節から採られた。

画家としてのジョセフ・リーは特異な作風の肖像によって知られる。

KID YOU NOT
Courtesy of the artist and Diesel Gallery

COVID-19の世界的流行によってその主題を人物から自然へと転換した。誰もいない森の中での孤独から導かれた、恐れ、驚き、そして至福の体験は、彼に新たな作品世界への道を示した。

自然の力に対して人間は小さな存在。思いがけない瞬間にも身を任せよう

PATHLESS 1
Courtesy of the artist and Diesel Art Gallery

道なき森には喜びがあり

人けのない海岸にはこの上ない幸せがある

閑散とした空間にこそ存在する交わりの場

深い海のほとりの怒涛が奏でる音楽

人間を愛していないわけではない ただ自然がより愛おしい

これまでのようにこれからも 交わりの場を経験し 宇宙を感じたい

言葉では言い表せないが 胸に秘めたままにもできない

このような面会から 私は人間よりも自然を愛する

宇宙と交わり 感じる

表現することはできないが すべてを隠すことはできない

― 『チャイルド・ハロルドの巡礼』 カント4章

「PLEASURE IN THE PATHLESS WOODS – 道なき森の喜び」は、曖昧で漠然とした被写体の意図を通して、おぼろげな瞬間を明らかにしていく。その瞬間にふと立ち止まり、これまで歩んできた道のりとこれから歩むべき道に思いを巡らせる大切なひとときへの招待状であり、物事の奥深さや暗黙のつながり、そして思いがけない成長といった喜びや驚きへ導く道しるべでもある。

ほんのわずかの間だけ、現実逃避ができる一服のひととき。癒しの空間を確保できる大切な時間である。言葉を交わすことも、弱音を吐くことも、他の方法でコミュニケーションを取ることもできない人々のその場には仲間意識が存在する。

子どもが大人になる瞬間。成長を迫られた子どもたちは、自ら積極的に新しいページをめくり、恐れを抱えつつも好奇心と期待に満ちた未来への一歩を踏み出す瞬間。

愛情を表現するよりも謝罪する方が容易だと思っている疎遠な父親が息を引き取る前に、壊れた親子関係を再構築しようと奮闘する瞬間。

ジョセフ・リーは、バイロンの詩を引用し、「バイロニック・ヒーロー」として知れ渡る憂鬱さを、ストイックで謙虚かつ好奇心旺盛な観察者に近い存在として表現した。リーは、「自然の力に対して、私たちがどれほど小さな存在であるかを理解することで、私は安らぎと謙虚さを感じることができます。しかしながら、安らぎは未知の道からも訪れます。力づくでコントロールするのではなく、思いがけない瞬間にも自由に身を任せてみよう」と語っている。

PATHLESS 3
Courtesy of the artist and Diesel Art Gallery
SAME DIFFERENCES
Courtesy of the artist and Diesel Art Gallery
 
 
ALL KOREAN MEN SMOKE FROM THE SAME CIGARETTE
Courtesy of the artist and Diesel Art Gallery

アーティストであり俳優でもあるジョセフ・リーは、カラフルで抽象的なストロークで被写体の顔を暗示的に隠した肖像画をメインに描く。リーは、細分化された筆遣い、色の選択、ボリュームを通して、人物に宿る感情を探求し表現する。

俳優業では、2018年のサンダンス賞を受賞した映画『Search』、2023年にNetflixで公開されエミー賞13部門にノミネートされた話題作『Beef』、Paramount+の人気SFシリーズ『Star Trek: Picard(シーズン3) 』などにも出演している。

Photo: Miki Matsushima
Courtesy of the artist and Diesel Art Gallery

編集部のひとこと

人間の顔に宿る感情を、力強い筆の走りと油彩の厚みで表現してきたジョセフ・リー。演技と真実の間で生きる俳優という職業柄、外面はあてにならず、常に内面に、二重の意味に注目するのが俳優だ。

人物の外観を効果的に壊すことによって人間の内面を描いてきたリーの筆力は、今回、自然の力の偉大さを描くことにも成功した。見たままの自然ではなく、彼独自のエネルギッシュな筆致が、自然が秘める偉大さを描くことにも成功したといえる。

JOSEPH LEE

Photographer: Ja Tecson

DIESEL ART GALLERY

ライフスタイルブランド、ディーゼルが手掛けるギャラリー「DIESEL ART GALLERY」。新進気鋭のアーティストや、他では見ることができないアバンギャルドな作品と気軽に触れ合うことができる場として知られる。知名度、ジャンル、世代を問わず、グラフィックや写真、インスタレーションなど世界中から厳選した幅広いテーマのアート展を開催。アート作品やアーティスト関連グッズの販売も行っている。コンセプトストア「DIESEL SHIBUYA」内に位置し渋谷というアクセスのよさも魅力。最新のアート発信拠点としても注目されている。

Photo: Miki Matsushima
Courtesy of the artist and Diesel Art Gallery

展覧会概要(会期終了)

タイトル: PLEASURE IN THE PATHLESS WOODS

アーティスト: JOSEPH LEE

会期: 2023年9月23日(土)-11月16日(木)

会場: DIESEL ART GALLERY

住所: 東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti DIESEL SHIBUYA B1F

TEL: 03-6427-5955

入場:無料

キュレーター: JORDAN A. Y. SMITH(ジョーダン・A.Y.・スミス)

www.jordansmith.space

プロデューサー(Naro.tv)、COEM代表理事、詩人、文芸翻訳家、日本文化・比較文化の教授、TETEブランディングのLanguage Branding Director、『東京ポエトリージャーナル』元編集長などマルチに活躍。

施工: 糟谷 健三

展覧会ウェブサイトhttps://www.diesel.co.jp/ja/art-gallery/joseph_lee

「PLEASURE IN THE PATHLESS WOODS」展の開催を記念して、ディーゼルとジョセフ・リーのコラボレーションによるアイテム、Tシャツやポストカードなどが登場。

Online Store: https://dieselartgallery.stores.jp

X (旧Twitter): https://twitter.com/dieselart