Selected by ART Driven Tokyo

絵画が“語り始めた”瞬間
13世紀、イタリア。
世界はまだ、平らだった。
絵画は記号。
信仰のしるし。
神は金色に包まれ、
人びとは、地に足をつけていなかった。
ビザンティン様式。
硬直した表情。
影のない地面。
動かない空。
そこに、ひとりの青年が現れる。
ジョット・ディ・ボンドーネ。
田園に生まれた男。
彼は空を見た。
大地を見た。
人の顔を見た。
そして描いた。
光と影。
奥行きと空間。
感情と体温。
理論はなかった。
遠近法は、書物の中には存在しなかった。
だが、彼には見えていた。
アッシジ。
サン・フランチェスコ聖堂。
聖なる壁に、現実の空間が広がる。
空は高く、
地は奥へと続き、
人びとは、そこに生きていた。
この絵の小鳥たちは、逃げない。
聖人は、神を語るより先に、
自然とともに呼吸している。
絵が、語りはじめた。
人間の視点で、世界を見るということを。
ジョットは、革命を起こした。
線を引き、影を落とし、空間を開いた。
それは、ただの技法ではない。
それは、まなざしの転換だった。
神の世界に、人間の光を持ち込んだ。
祈りの中に、現実を見つけた。
その一歩が、ルネサンスを導いた。
未来を描いた男。
ジョット。
彼の絵から、すべてが始まった。
ART Driven Tokyoが選ぶ、世界を変えた名画5選。第2回は、あの「モナ・リザ」。ラファエロよりも地味なのに、この目線が「文明の象徴」となったのはなぜ?ぜひご一読を!