世界一有名な微笑みの、ミステリアスな出世物語
Selected by ART Driven Tokyo

モナリザは、マニアの秘蔵っ子だった
レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナリザ》。
いまや「人類を象徴する絵画」だが、実は最初から有名だったわけではない。
華やかさはない。宝石なし。ドレスも暗い色。
ラファエロの《聖母子像》のわかりやすい美しさとは対照的だ。
ただ、静かに微笑むだけの女性――地味な肖像画だった。
だが、絵画マニアたちは夢中になった。
理由は、ダ・ヴィンチの秘技「スフマート」。
「煙のように」、線や境界線を使わずに色を混ぜ合わせる技法。
輪郭をぼかして、立体感や奥行きを表現する。
空気の中に人物が溶け込むような、不思議な存在感。
写実を超えたリアルに、見る者は引き込まれた。
それでも、一般には無名だった。
名画が世界に知られるきっかけは、なんと「盗難事件」。
1911年、《モナリザ》がルーヴル美術館から盗まれる。
犯人は「祖国に絵を取り戻す」と主張し、イタリアに持ち帰った。
この事件が世界中の新聞を騒がせた。
名画は一夜にして伝説となる。
2年後に無事発見されると、すでに《モナリザ》は“世界のスター”だった。
こうして、「地味な肖像画」は「人類の象徴」へと変貌する。
技巧とミステリーが生んだ、奇跡のブランディング。
そして、あの微笑みは今も問いかける。
「あなたには、私の正体がわかる?」
ART Driven Tokyoが選ぶ「美術史を変えた名画5選」①は、「西洋絵画の父」ジョット。彼の革命的精神について解説しています、ぜひご一読を!