世界一有名な微笑みの、ミステリアスな出世物語

Selected by ART Driven Tokyo

Photo: wikimedia commons

モナリザは、マニアの秘蔵っ子だった

レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナリザ》。
いまや「人類を象徴する絵画」だが、実は最初から有名だったわけではない。

華やかさはない。宝石なし。ドレスも暗い色。
ラファエロの《聖母子像》のわかりやすい美しさとは対照的だ。
ただ、静かに微笑むだけの女性――地味な肖像画だった。

だが、絵画マニアたちは夢中になった。
理由は、ダ・ヴィンチの秘技「スフマート」。
「煙のように」、線や境界線を使わずに色を混ぜ合わせる技法。

輪郭をぼかして、立体感や奥行きを表現する。
空気の中に人物が溶け込むような、不思議な存在感。
写実を超えたリアルに、見る者は引き込まれた。

それでも、一般には無名だった。
名画が世界に知られるきっかけは、なんと「盗難事件」。

1911年、《モナリザ》がルーヴル美術館から盗まれる。
犯人は「祖国に絵を取り戻す」と主張し、イタリアに持ち帰った。

この事件が世界中の新聞を騒がせた。
名画は一夜にして伝説となる。
2年後に無事発見されると、すでに《モナリザ》は“世界のスター”だった。

こうして、「地味な肖像画」は「人類の象徴」へと変貌する。
技巧とミステリーが生んだ、奇跡のブランディング。

そして、あの微笑みは今も問いかける。
「あなたには、私の正体がわかる?」

ART Driven Tokyoが選ぶ「美術史を変えた名画5選」①は、「西洋絵画の父」ジョット。彼の革命的精神について解説しています、ぜひご一読を!